ページ

2013-05-01

おすすめの本) 『奇跡のリンゴ』と『りんごが教えてくれたこと』

おすすめの本をご紹介します。

木村秋則さんの『奇跡のリンゴ』と『リンゴが教えてくれたこと』、この2冊は、自然の摂理に沿った暮らしというものを考える、最初の最初のきっかけになった本です。今まで当たり前だと思っていたことに疑問を持つようになり、いろいろな本を読み漁るようになりました。

実家がりんご農家なので、本にも書かれている通り、日本でりんごの無農薬栽培は不可能だというのは身にしみて理解していました。

本にもありますが、りんごはもともと、乾燥した地域が原産のバラ科の植物です。高温多湿な気候の日本では、カビなどが原因となる病気にかかりやすく、殺菌剤などの使用なしには栽培が不可能というのが常識でした。カメムシに吸われたら売り物にならないし(そこだけ取り除いて食べればいいのだけど)、割ってみてシンクイムシが入っていたらお客さんは怒るだろうし、いろんな虫がりんごを食べるので、殺虫剤を使わなければ、まともに販売できるりんごが実らないと思っていました。

そういうわけで、りんごの無農薬栽培に成功した、と書かれたこの本が書店で視界に飛び込んできたときには衝撃でした。

ちなみに、実家では殺菌剤と殺虫剤を合わせて10回前後使用しているそうですが(状況を見て散布が必要かどうかを判断するので年によって異なる)、以前、農薬の散布回数を表示している自然食品のお店で、合計で「28回散布」と書かれたりんごが「減農薬りんご」として高値で販売されているのを見て、28回で減農薬って、普通はどのくらい使われるのだろう?と疑問に思いました。

よく、本をちゃんと読まずに、木村秋則さんのことを聞きかじって「りんごなんか無農薬で栽培してる人だっているのに、農薬使うなんて」みたいな批判をする人がいます。こういう知ったかぶりの自然派は、本をちゃんと読んだほうがいいと思います。無農薬に切り替えての試行錯誤のところを読んでいると、本当に悲惨な状況になっていて、正直、うちの両親はやらないでくれてよかったなぁと思ってしまいました。

不可能を可能にする挑戦をして、多くの人々に新しい見解を提示してくれたことは、本当に偉業だと思います。農法の参考になる話だけではなく、自然の営みのこと、邪魔者扱いされている草が実は土を耕してくれていること、観察をもとに自分の頭で考えること、さまざまな学びのある本でした。

2013-04-15

「複」業という働き方

私のまわりには、「仕事は?」ときかれても、「こんなことと、あんなことと、それから、 こんなんもしてて。あ、あとこういのもやってて、うーんと、それから…」のように、ひと言では説明が難しい人が結構います。

複数の活動を生業(ナリワイ)にしている人たちです。どの活動もやりたいことで、どれもだれかに喜ばれていて、感謝されていて、働いている時間も、自分の人生の目的といったら大げさかもしれませんが、意義のある時間になっているように見えるし、楽しんでいるように見えます。

カフェやレストランも、ちょっと前までは、飲食するためだけの場所だったように思いますが、最近では、マルシェが開かれたり、お祭りが開かれたり、ワークショップが開催されたり、雑貨屋さんにもなっていたり、ヨガスタジオになったり…、とひと言ではとても言い尽くせないお店も多く見かけるようになりました。

生業にする、と言っても、お金をもらう仕事のみに限らず、生きていくために必要なものを得たり、生産したりする活動もあります。

手仕事のお手伝いをして夕飯をごちそうになる、というお手伝いのスタイルも聞いたことがあります。ウーフ(WWOOF)というのも、ウーファーは農業などの作業を手伝い、受け入れ側は宿と食事を提供するという制度で、お金以外の対価をやりとりする仕組みです。経験をセンスの糧にしたり、技術を覚えたり、縁を育んだり。こうしたことも人生を豊かにする財産だと思います。

お金以外の「収入」を得る以外にも、自給の割合を増やせば支出が減り、支出が減れば、手元に残るお金は増えます。そうすれば、お金で得なければならない収入は減らせます。

米や野菜が自給できるようになれば、お金で買わないといけないのは、調味料程度。麹も作れるようになったら、味噌やしょうゆも自分で作れるので、買うのは塩だけでいい、ということになります。塩も海水からつくるという人もいますが(!)。

エネルギーの自給も大きいです。近所の森や庭の木々を手入れして薪を作る、あるいは、生ゴミをバイオガスとして利用できる仕組みをつくれば、ガス代もいらなくなります。太陽熱温水器があればお風呂もタダでわきます。電気も自家発電にできれば、電気代もいりません。

省エネで削減した分の電力を発電したものとみなす「ネガワット発電」と同じ発想で、自給や手作りによって節約できたお金を稼いだものとみなせば、それも立派な生業(ナリワイ)だと思います。それに、食べられなくなるリスクをさまざまな形で分散できることも「複業」のいいところ。貨幣経済がダウンしても、食料を自給していれば、食べるのに困ることはないし、熱と動力の自給ができていればエネルギーに困ることもありません。

自給の範囲を増やし、支出を減らして、生活に必要なお金を少しにして、パートタイムで働けばいいという人もいて、たくましく、複業を楽しんでいるようです。草刈りのバイトをしたり、ちょっとお金がたくさん必要になったときだけ短期のバイトをしたり。空いた時間でコツコツと自分のやりたいことを形にしようとしている人もいます。

正社員か、フリーランスか、という二者択一ではなく、やりたいことだけでは足りない収入は、バイトをいくつか組み合わせながら、複業でいくという選択肢もあります。私も東京時代は出版社でパートタイムで働きながら、翻訳やリサーチ、家庭教師などをしつつ、暮らしの自給率を高めることもいろいろしていました。バイトも、やりたいことやいい縁でつながった仕事だとなお楽しいですね。

*ちなみにこの「複業」という言葉は、たぶん何かで読んで記憶に残っていたのだと思いますが、何で読んだのかはちょっと定かではありません。すみません…。