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2017-10-19

つごもり月報 和暦葉月

明日から和暦では長月。秋の土用に入り、寒さを感じる日も多く、本格的な冬支度をそろそろ…といった季節になってきました。自転車で走っていると金木犀がふわりと香ってきます。ここ1週間ほどは雨が続いていてだいぶ散ってしまったかもしれません。少し前から始めたつごもり月報、今月のいろいろをお伝えしたいと思います(書きやすいのでなんとなくテーマというかコーナーのようなものも設けています)。

【Talk Over Some Tea】
遊びにきてくれたらお茶でも飲みながら話したいよもやま話といった感じのコーナーです。

「モリカケ解散」とも呼ばれる今回の衆議院選挙。投票日の10月22日はお天気が崩れそうだったので、晴れ間を見て期日前投票に行ってきました。予定のある方や天気が心配な方は期日前投票がおすすめです◎ 空いていて、「小選挙区(候補者名)」「比例代表(政党名)」「最高裁判事国民審査」と3つあっても、あっという間に済みました。

森友学園と加計学園の問題について、国会を開けば追及が免れないから、と審議も開かず冒頭解散という暴挙。北朝鮮のミサイルのおかげで支持率がやや回復していて、野党が混乱している今が解散の好機とにらんだと、ガーディアン紙をはじめ、海外紙は的確に報じていました。

こんな解散権の濫用には憤りを感じますが、税金を600億円もかけての選挙、どんでん返しがあったほうがいいと思うので、自分なりに情報を集めて今はどうするのが一番ベストかをよくよく考えて一票投じてきました。女性が投票できるようになってまだ100年経たないんですね。収入や性別に関係なく、一票を投じる権利を残してくれた先人の血と汗と涙に頭が下がります。

情報をいろいろ集めていたら、「畑を守る」と書かれた麦わら帽子を被った現役のはるさー(農家)のおっちゃんとか、元オーガニックコスメ店長の若い女性とか、全国各地でおもしろい候補者が立候補されていてわくわくしました。無所属リベラル派の山尾しおりさんの応援に右派論壇で有名な小林よしのりさんが演説に来るなど、驚きの動きもありました。

右とか、左とか、そういう型やレッテルを外して、自分が考えることは何か、というところに立ち返ってよく考えて議論を交わす人、行動する人が出てきているように感じます。保守思想に基づく本来の保守を唱える中島岳志さんと、共産党の山下芳生さんの対談も読み応えがありました。中島さんはこの対談の中で「保守の論理を追求すると、内政面では共産党の政策と近くなる」と語っています。

この対談記事では、縦軸をリスクの社会化(セーフティネットの拡充)⇔リスクの個人化(自己責任)、横軸を価値観に対する態度がリベラル(寛容)か⇔パターナル(強権的・父権的)かとして、座標軸で切り分けられた4つのゾーンに各党の立場を図示しています。この図による説明もわかりやすかったです。メディアにおける「保守」という言葉の使われ方については以前から違和感を持っていましたが、こちらの対談を読んで改めて、本来の「保守」という思想・定義からは、現在のメディアで使われている「保守」の意味が大きくかけ離れていると言わざるを得ないと思いました。

「投票に行こう」だけでは無責任だと、10~15分で投票に必要な情報を知ることのできるウェブサイトを作った若者たちもいます(中心となっている人は在日韓国人の26歳の方で、選挙権がありません。税金を払っているのに参政権がない。申し訳ない気持ちになりました)。

最高裁判事の国民審査の判断材料としては、こちらの記事がまとまっていてわかりやすかったので、ご参考までリンクをつけておきます。
憲法の番人、過去の判断は? 「一票の格差」など 最高裁裁判官7人、国民審査(朝日新聞20171017)
衆院選と同時に行われる最高裁判所裁判官国民審査とは(ポリタス20171016)

いろんな人ができることなんかないかな~といろんなことをされている。大きい取り組みもあれば、目立たないけど重要なこともある。政治のことは知れば知るほど、闇の深さに絶望を感じることもあるけれど、できることを無理せずに楽しみながらやる人が増えてもきているので、世の中はやっぱり良くなってきているのかもと明るい気持ちになりました。

【手を動かす】
最近つくったもののこと。
・ティーコゼー
暮しの手帖に載っていたティーコゼーが使いやすそうだったので、家にあったウールのハギレで作りました。アウトラインステッチで刺繍を入れて贈り物に。

・紫蘇の実の塩漬け
こぼれ種で庭や畑に増えた青じそが穂紫蘇になったので、指でしごいて外して塩漬けにしました。プチプチしてごはんのおともに最高です。

・すだち味噌
無農薬のすだちをたくさんいただき、くださった方が「皮が体にいい!」と力説されていたので、皮をすりおろして、果汁を絞って味噌と甘酒と合わせてすだち味噌に。おむすびやふろふき大根にも。

【しごとのこと】
今月はレギュラー作業(時事ものの翻訳&語彙問題作成)に加え、TOEICの問題集の訳と解説を書いておりますー。あとは、相方が主宰する働き方についてのワークショップで使うワークの内容を一緒に考えたり、準備を手伝ったり、相方が書いているサステナブルな暮らしについてのコラムの資料集めや校正を手伝ったり。わりとゆるりと楽しみながらいいペースで仕事ができたかな~という月でした。

【最近読んだ本から】
このひと月に読んだ本からおもしろかったものを紹介します。
『ブラウンズフィールドの丸いテーブル』
友人に連れて行ってもらったカフェで販売されていたこの本。別の友人が何年か前に取材で訪れ、その記事でブラウンズフィールドを知りました。オーガニックなカフェと宿もしている素敵な場所です。その後、ブラウンズフィールドの中島デコさんのマクロビお菓子のレシピ本も買って、いろいろ作っています。

この本にはブラウンズフィールドがどんな場所なのか紹介されているほか、ブラウンズフィールドで昔スタッフをしていた人と中島デコさんとの対談もあり、思い出のレシピやお気に入りレシピも載っています。マクロビオティックは「バランス」が根幹で、食べ物を邪・正に分けるものではないのに、どんどん「ミクロビオティックに」なってしまっているという問題意識にも共感しました。とくに「生きているだけで、いいんじゃない」(このタイトルの本もある)という言葉がズドンと響きました。生きることが中心のあり方は、人生っていう壮大な作品をつくっていくっていう大きな視点を思い出させてくれました。

『知ってはいけない』(矢部宏治著/講談社現代新書)
秘密にしておく期間が切れて出てきた公文書など、れっきとした証拠に基いて日米関係の暗部に光を当てた『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』『日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか』の矢部宏治さんの最新刊ということで早速取り寄せて読みました。この2冊を高校生や外国の人にもわかるくらいわかりやすく簡潔にまとめてほしいという要望からまとめられた本ということですが、前作から今作が出るまでに起こった出来事や明らかになったことも追加されています。ひと目でつかめる4コマ漫画も添えられています。なんで知ったほうがいいことなのに「知ってはいけない」というタイトルなんだろう?と思ったのですが、「おそらくほとんどの読者にとって、そうした事実を知らないほうが、あと10年ほどは心穏やかに暮らしていけるはずだと思ったから」という理由だそうです。現代ビジネスの「なぜ日本はアメリカの「いいなり」なのか?知ってはいけないウラの掟」に前書きのほとんどと、重要なポイントを論じた部分が載っていて、この本をなるべく多くの人に読んでもらいたいという出版社の心意氣を感じました。

【編集後記みたいな】
急に選挙も始まったこともあってお伝えしたいことがありすぎて、なんだか重たくて長い月報になってしまいましたが、最後まで読んでいただいてありがとうございます。それではまた来月~。