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2017-11-17

つごもり月報 和暦長月

明日から和暦神在月。出雲の国に八百万の神々が集まるので出雲以外では神無月と呼ぶという説もありますが、「無」が「の」の当て字で「神の月」という意味という説も。はからめのカレンダーで「神在月」になっていたのを見てから、やっぱり神在月のほうが好きだな~と思い、うちの暦では「神在月」にしています。少し前に始めましたつごもり月報、今月のいろいろをお伝えしたいと思います(書きやすさからテーマというかコーナーのようなものも設けています)。

【Talk Over Some Tea】
遊びにきてくれたらお茶でも飲みながら話したいよもやま話といった感じのコーナーです。

今月はsympathyとempathyのお話を共有させてください。日本語ではどちらも、「共感」と訳されることの多い英語です。今、「平和学の父」とも呼ばれるヨハン・ガルトゥングさんの本『日本人のための平和論』を読んでいるのですが、その中にsympathyとempathyは明確に異なる語であることが書かれていました。

sympathyは相手と同じ気持ちになる「共感」。例えば、ある曲にAさんが感動して、Bさんにも薦めて、Bさんもその曲についてAさんと同じ感動を味わって共有したとしたら、AさんとBさんの間にはsympathyが生まれています。

一方、empathyは、相手が思っていることを理解する「共感」で、必ずしも同じ気持ちを感じる必要はありません。例えば、Aさんが感動した曲をBさんが感動しなかったとしても、Bさんが「Aさんはこういうの好きそうだなぁ」、「自分にはない経験だけどAさんはきっとこういう経験があるからこの曲にはげまされるのかも」など、Aさんの気持ちを理解する場合は、BさんはAさんに対してempathyを持っています。

sympathyを求めすぎると、平和や調和と真逆の状態につながりかねません。自分と同じ気持ちになってくれないからと敵視してしまったり、排除してしまったり、ということが、集団の中では起こりがちな気がします。日本では特に、自分の考えや思いを発表する機会が少ないので、異なる意見に触れることも少ないし、empathyの訓練というのはほとんどされておらず、sympathyが重視されやすいように思います。

平和や調和の鍵になるのはempathy。相手の考え方、感じ方、思うことを理解して、どうしたらお互いに心地よくあれるか、それを相談しながら探っていく。その積み重ねで平和はつくられていくと思うので、empathyを鍛えていきたいと思いました。

【手を動かす】~最近つくったもののこと。
今月は繕い物くらいでした。繕ったのは、草木染めのブロックプリントのバンダナが裂けてしまっていたので、プリントに使われている色と似た色を選んで草木染めの刺しゅう糸でダーニングしたり、あとは、靴下、ワークパンツ、靴下に靴下に靴下……。

そういえば、乾燥が進んできたので、みつろうとシアバターのクリームも作りました。と言っても、材料を湯煎して混ぜるだけなのですが…。無農薬・無化学肥料・低温圧搾のオイルと、オーガニックシアバター、ノーザンライツのみつろう、オーガニックラベンダー精油を湯煎で溶かして容器へ。リップクリーム、ハンドクリーム、顔、爪、どこにでもこれ1つでOKです。オイルは、ホホバオイルでも、アルガンオイルでも、ココナッツオイル、椿オイル、ひまわりオイル、ひまし油、好みとお肌に合えば何でも大丈夫です◎香りと配合は自分好みでアレンジしてください(レシピは検索すると複数出てきます)。

【しごとのこと】
今月は特に変わったこともなく、いつもどおりな感じでした。いつもどおりではあるけど、メールのやりとり、訳した記事、リサーチして知ったこと、ささやかなことにも、こころがさまざまに動きます。よい人たちとお仕事をさせてもらっていてありがたいです(どうしてるかな~と気にかけてくれている友人・知人のみなさんもありがとうございます)。

【最近読んだ本から】
このひと月に読んだ本からおもしろかったものを紹介します。

・『サステナブル・ミュージック』(若尾 裕著/アルテスパブリッシング)
「サステナブル」(持続できる)も「ミュージック」(音楽)も好きなので、本屋さんで発見して衝動買いでした。お店の方によると、たいへん話題を呼んでいるのだとか。録音が前提でなかった時代の音楽のことや、BGMが奪う気分の自由、参加型音楽の持つ可能性(ライブ等を聞く「上演型音楽」に対して演奏に参加する音楽のこと)などなど、音楽について多角的に論じられています。森で暮らす民族が食べ物を採集に森に入って、どこからともなく歌が聞こえはじめると、ほかの人たちも歌いだして、森一体が歌に包まれる話に特に感銘を受けました。著者の方は音楽療法を専門にされていて、即興で奏で合う音楽が心にもたらす影響のことにも触れられていました。ご自身で企画された即興セッションを連続3日間する試みについても書かれていておもしろかったです。

CDが売れなくなったと言われて久しい昨今ですが、そういう複雑化して収益性が高くないとできない音楽ではなく、もっと素朴な音楽との付き合い方、例えば、生演奏で共有したり、みんなで奏でたり、自由に響き合ったり、そういうこともしやすくなってきているように思います。音楽の民主化が始まっているのかもしれません。民主化された音楽は、無数の人たちの心の中から生まれて、自然発生的に共有されるものだから、きっとずっと続いていくサステナブルな音楽になるんじゃないかと思いました。

・『世界から飢餓を終わらせるための30の方法』(ハンガー・フリー・ワールド編著/勝俣 誠・監修/合同出版・刊)
図書館で発見。飢餓の原因やユニークな解決策がまとまっています。一例を挙げると、解決策の1つに有機農業を応援することが挙げられていました。無農薬・無化学肥料の農業を応援することは、食べる人の健康のためになるだけではなく、農家の人が農薬の害で体調を崩したり、化学肥料で土がボロボロになって最終的には不毛の大地になったりするのを防ぐことにもなります。

例えば、ハンガー・フリー・ワールドがバングラデシュで有機農業への転換支援プログラムを実施したところ、生産者の方々の体調は良くなり、自給用の作物が十分に収穫できるようになり(飢餓の不安も解消)、これまで農薬や化学肥料を買っていたお金を貯蓄に回せるようになって生活も楽になったそうです。無農薬・無化学肥料の農産物を「買って応援」する人のことを「健康オタク」と嘲笑する人もいますが、生産者の方のためにも、地球のためにもなる行動だと思いました。また「寄付は未来への投資」(p. 94)という考え方も新鮮でした。

こんな感じで、飢餓を終わらせるための方法が提案されています。ただ、章立ては30ですが、飢餓とは何かといった概論も冒頭に何章かあるので、方法は実際には20くらいかも。自分に合った方法を見つけて行動につなげていきたいと思いました。

【編集後記みたいな】
今月はなんだか音楽が多かったような。数か月前に偶然、Tracy Chapmanさんというアーティストの音楽を耳にし、その声の深さというか厚みというかに衝撃が走って、アルバムをすぐに取り寄せました。その後、たまたま通りかかった中古CDの販売イベントでも発見して、わずかな期間で4枚も集まり、よく聴いています。どの曲を聞いていても、現実をまっすぐ見据えながらも根底にあるエネルギーは希望に向かっているという感じがして、明るい気持ちが広がってくるような感じがします。Youtubeにもあるので、ご興味を持たれましたらぜひ検索してみてください。それではまた!