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2017-12-17

つごもり月報 和暦神在月

明日から和暦では霜月。今年は冬が早くて、11月から年末年始並みの冷え込みでした。12月の頭には雪も舞いました。寝袋に湯たんぽを入れてこたつ代わりにして、手首が冷えないようにアームウォーマーで防寒してデスクワークな日々です。みなさまも温かくしてお過ごしください。それでは、今月のいろいろをお伝えしたいと思います(書きやすさからゆるくテーマというかコーナーのようなものを設けています)。

【Talk Over Some Tea】
(遊びにきてくれたらお茶でも飲みながら話したいよもやま話といった感じのコーナーです。)
映画『人生フルーツ』を観てきました。建築家の津端修一さんと手仕事が大好きな英子さん、2人合わせて177歳の夫婦の生き方を描いたドキュメンタリーです。

【予告編映像】


雑木林を育みながら野菜や果樹を育て、手づくりを愉しむていねいな暮らしをしているご夫婦で、『あしたも、こはるびより』『ひでこさんのたからもの』『ときをためる暮らし』など、2人の暮らしをフィーチャーした本もたくさん出ています。

本では英子さんのお料理や2人のスローライフが中心的に描かれていることが多いのですが、本ではあまり深く触れられていなかった修一さんの生き方や哲学のようなものを映画で垣間見ることができて深く感銘を受けました。とても筆まめで、一日に10通くらい手紙を書いていたり、人との心の通い合ったつながりを大切に育まれている姿もすてきでした。

修一さんは、雑木林を残し、風の通り道のある里山と共生したニュータウンを設計しましたが、効率最優先の時代にそれは実現せず、最終的にできあがるのは似たような建物がぎゅうぎゅうに立ち並ぶ無機質な大型団地でした。どんな想いでそれを目にしてきたのだろうと痛ましい気持ちになりました。修一さんはだんだんと都市計画の建築プロジェクトに距離を置くようになります。

山を削り、谷を埋めた場所にでも、人が雑木林のある庭を育みながら住めば、里山を取り戻すことができるのではないか、という考えから、自分が設計に関わったニュータウンの1つに土地を手に入れ、英子さんと共にその実験をスタートします。そして50年ほどが経ち、木々は大きく成長して、四季折々の実りをもたらしていました。自分が生きている間に少しでも土をよくして次の世代に渡せるようにしたいという気持ちで日々、庭と畑と触れ合う姿を見て、自分もそうありたいものだと思いました。そうやってずっと自分で手を動かしてきた2人の語る「自分でできることは自分でこつこつやってみれば見えてくるものがある」という言葉には重みを感じました。

映像を通じて2人のやりとりを観て、夫婦という一種の契約関係に甘んじることなく、常にお互いを個人として尊重しているということが伝わってきました。お互いの考え方や感じ方、したいことなどを理解してサポートし合っている関係性が、修一さんが英子さんのことを紹介するときの「彼女はぼくにとって最高のガールフレンドです」という言葉に象徴されていると思いました。英子さんは昭和の価値観を徹底的に叩き込まれて育っていることが会話の中から読み取れましたが、英子さんが何かをしたいと言うと、修一さんが「それは素晴らしいことだからやったら」と言ってくれるので、だんだん思っていることを話せるようになってきたと語られているのが印象に残りました。

英子さんと修一さんはいつもお互いにお互いを思いやりあっていて、「相手が必要としていることは何かな?」というアンテナをいつも働かせている感じがしました。お互いに相手のためを思うことをして、喜びや感謝を伝え合うことも忘れず、喜んでくれるとうれしいからまた相手のためになりそうなことをして、また喜んで感謝して…その繰り返しで、とても素敵なループを創ってこられたんだなぁと思いました。

この映画のことを知ったときには一般の劇場での上映は終わっていたのですが、知人が自主上映会を開いてくれたので観ることができました。全国各地で自主上映会が開かれたり、アンコール上映もされているようなので、もしご興味を持たれましたら、お近くの開催情報をチェックしてみてください。

【手を動かす】~最近つくったもののこと。
・干ししいたけ
相方が森林活動で関わっているNPOで、なめこ汁をみんなで楽しみながら森林に親しむイベントがあり、だしとみその調達をすることになりました。相談の結果、昆布・切り干し大根・干し椎茸でだしをとることになったのですが、天日干しの干し椎茸が見つからなかったので作ることに(天日干しのものは臭くなくておいしい)。高知県産の原木栽培の椎茸を早く乾くように薄くスライスして天日に干し、夜は家の中に取り込んでストーブのそばへ。寒くて乾燥して晴れた日が続いていたのでカビることなくカラカラに干せました。干すとビタミンDが増えるらしいです。

・籾付き玄米の黒焼き茶(玄米コーヒー)
 自家栽培のハッピーヒルを土鍋でじっくり炒って黒焼き玄米茶(玄米コーヒー)をつくりました。ストーブにかけてときどきかき混ぜながら2時間半くらい、最後はガスコンロで炭化させました。去年は焚き火でやったのですが、火加減が難しくてポン菓子がたくさんできてしまいました…。練習あるのみです。味は薄めにすると麦茶、濃いめにするとコーヒーに似ています。
 食養(マクロビオティック)の世界では、陽性食品の玄米を長時間炒って炭化することで、極陽性の食品になり、放射性物質や添加物などの極陰性の毒を中和したり、冷えと冷えが原因で起こる不調を改善したりするので、「起死回生の妙薬」とも言われています。何年か前に鉄のフライパンで作ってみたら、飲めば飲むほど喉が乾いたので、鉄のフライパンだと陽性が強くなりすぎるのかもと考えて、中性と言われる土鍋でやってみたら大丈夫でした。不思議なものです。籾にはシリカというミネラルが豊富で、カルシウムの吸収を助けたり、美肌にもよいのだとか。おいしかったのでまた時間のあるときにじっくり炒ろうと思います。

【最近読んだ本から】
このひと月に読んだ本からおもしろかったものを紹介します。
・『日本人のための平和論』(ヨハン・ガルトゥング著、御立英史訳/ダイアモンド社刊)
 「平和学の父」とも呼ばれる平和学の権威で、多くの国際紛争を調停してきたヨハン・ガルトゥングさんが日本の現状を憂慮して緊急提言をわかりやすくまとめた本です。矢部宏治さんの『知ってはいけない』や『日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか』などでアメリカの公文書を元に解明されていた異常な日米関係についてもさらりと述べられていて、日本では「トンデモ論」扱いされることも多いのに、国際社会では「常識」なんだと改めて思いました。非常に現実的で実行可能な提言が盛りだくさんで、読んでいて希望が湧いてきました。
 タイトルにつけたリンク先では、訳者の御立英史さんが自ら記事を構成して内容をたっぷり読めるようにしてくださっています。そのくらい多くの方々に読んでもらいたいということだと思うし、私も読んでみて、特に国会議員の皆さんやメディア関係の人にはぜひとも、多くの方々に読んでもらいたい本だと思いました。
 安倍政権が自らの「米国追従の攻撃的政策」を、ガルトゥングさんの言葉である「積極的平和主義」とネーミングして印象操作を図っていたことについても、こちらの記事に本から引用する形で書かれています。本来の「積極的平和主義」は、「国家や民族の間に、ただ暴力や戦争がないだけの状態を消極的平和、信頼と協調の関係がある状態を積極的平和という」と定義されています。安倍政権の言う意味とは全く異なっていて、「許しがたい印象操作」と述べられていました(それがバレてから、安倍政権は「集団的自衛権」という言葉を使うようになりましたが、本ではこの言葉も定義がむちゃくちゃだと指摘されています)。

・『C階段で行こう!』(クジヒロコ著/シンコーミュージック刊)
今年で結成30周年を迎えたロックバンド・スピッツのサポートメンバーとして、19年間キーボードとコーラスを担当されててきたクジヒロコさんが書かれた本です。生い立ちやツアー中のエピソード、音楽や音楽活動のことなどもりもりな内容でした。とにかく文字量がすごい。カバーのイラストもクジさんが描かれたものなので、通われていた小学校の校長先生が毎朝5分間クロッキー(短時間でおおまかな写生をすること)をさせてくれてみんなすごく上手で「訓練ってすごい」と思ったというエピソードも書かれていました。

【編集後記みたいな】
あっという間に年末ですね。映画で英子さんと修一さんの「スローライフ」を見ていても思いましたが、「スローライフ」はお金を払って他人の時間を提供してもらわない分、自分でやることが増える暮らしなので、実際にやってみると世間一般のイメージとかけ離れてかなり慌ただしいことがわかります。無意味に駆け続ける忙しさとは違って、心を込められるので「心」を「亡」くす「忙しさ」とはまた違うのですが、うまく計画を立てないとどんどんやることに追い回されます…。天候や季節にも合わせていかないとタイミングを逃してしまうので、「スローライフ」こそタイムマネジメントが本当に大事だと思う年の瀬です。それではまた!