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2018-04-15

つごもり月報 和暦如月

明日から和暦では弥生に入ります。和暦日々是好日手帳によると、「弥生」は「草木がいよいよ勢いを増して生い茂る『いやおい(弥生)』の月」という意味なのだとか(関連コラム→「和風月名コラム 弥生」)。庭の草木はこのところまさにそんな感じです。草がどんどん生い茂るようになってきました。ヤブガラシなど、夏草の新芽もちらほら。歩く邪魔になったり、育てている野菜やハーブを日陰にしたりしなければ、草はあまり刈らないので、いろいろな草の花が咲いていて、いろいろなハチが蜜を吸いに集まってきます。珍しいと言われるニホンミツバチもよく見かけます。前置きが長くなりましたが…、今月のいろいろをお伝えしたいと思います。(書きやすいのでなんとなくお題のようなものを設定しています。つごもり月報を始めた経緯については初回の記事をご覧ください→vol. 1

【Talk Over Some Tea】
遊びにきてくれたらお茶でも飲みながら話したいよもやま話といった感じのコーナーです。
 今年の冬は例年にない寒さで、西暦の元旦(新暦の1月1日)の前にも、和暦の元旦(新暦の2月16日)の前にも、大掃除ができずじまい。ようやく暖かくなってきたので、このひと月は折を見て片付けと掃除をしていました。暑さにかまけて放置していたところが、秋にはどうにもならずに冬に持ち越され、それも寒さにかまけて放置していたので、あちこちごっちゃりしていました…。
 片付けは得意ではなく、職場などで片付けが上手な人に出会ったときは、すごいな~どうしたらそんなにすっきりを保てるんだろう…?と思ったものでした。片付けが上手な人は、仕事もさくさく片付けていくし、いろんなことが効率よくまわっていて、いつかは自分も片付けが上手になりたいなぁと思っていましたが、なかなか理想には程遠く…。
 いきなり大きなところに手をつけると挫折しそうなので、小さな範囲から1日にどこか1か所片付けることにして、ひと月、あちこちを片付けたり、掃除したり。よく、21日間(3週間)続けると習慣化できると言われますが、ひと月、継続してみたら、「やらないと」と思い浮かぶよりも先に身体が動くようになったような気がします。収納を改善したいところはまだまだたくさんあり、DIYも楽しみつつ、今年1年かけて家をもっと使いやすくしたいと思っています。

【手を動かす】
 掃除をしていて、以前作ったサンキャッチャーを落として欠けさせてしまい、草木染めのヘンプ紐と天然石で、サンキャッチャーをつくりなおしました。
 何年か前に、天然石のアクセサリーを作っている先生と知り合いになり、数回習いに行ったことがあります。アクセサリーが自分で作れるということにまず驚いて、一時、夢中になって何個も作っていました。
 その後、庵治石が掘られている現場を遠くから見る機会があり、地形が変わってしまうほど山がえぐられていて、天然石は天然素材で土に還るとはいえ、木をむやみに伐採したり、大地をえぐったりしているのかもしれないし、採掘している人たちが危険で劣悪な環境で働かされたり、不当に安い賃金で搾取されたりしているかもしれないし、と思うようになりました。そうではないとわかっている天然石を探しました(*)が見つからず、もう天然石を使うのはやめようと思って、3、4年ほど引き出しにしまったままになっていました。
 春の大掃除でこの天然石も手放そうかどうかと悩み、手放すということは捨てるか土に埋めるかということになるけれども、大地と遠くの国のだれかが犠牲を払って分けてくれたものを、何にも活用せずに捨ててしまうことと、何かに活用することと、どちらがマシだろうかと考えたときに、やっぱり、何かに活用したほうがいいのではないかと思えてきました。それでまた、アクセサリー製作を再開。紐が切れたり、摩耗してきたらまた石だけ外して作り直せばいいので、一生いろいろなものをつくって楽しめそうです。
*探していて発見したのがエシカルジュエリーのブランド。エシカルジュエリー(エシカル=倫理的な)とは、自然環境と労働者の人権に配慮してつくられたジュエリーのこと。日本のブランドでは、HASUNAEarthriseR-ethicalなどがあります(買ったことはありませんが(汗))

【しごとのこと】
 今月は特にお知らせがないので、仕事にまつわるちょっとした話を書きたいと思います。
 英文を訳すという仕事をしていて、英語で原文を作ってくださる方と顔を合わせる機会はほとんどないのですが、文面からどんな考えをお持ちの方なのかが結構伝わってくることがあります。直接会って話すとなると、考え方の相違から対立が生まれる可能性が低いということがはっきりしていないかぎり、本当に思っていることなどは率直に話しにくかったりもするので、顔を合わせて話すよりもむしろ、深い内容が垣間見えるのかもしれません。
 たとえば、一般的な人々を指す言葉にはいろいろありますが、individualsを多く当てている原文に会うことがあります。peopleが当てられることが最も多いように思いますが、あえてindividualsと書くのにはきっと理由があるんだろうなぁと想像したりします。個を大切にしたいという思いがある方なのかなぁ、そうだったらうれしいなぁと思ったり。
 ひとまとめにされて個々の人の顔が薄れる感じのするpeopleという言葉と、個人が複数いて顔がはっきり見える感じのするindividuals(individual=「個人」+複数形の-s)とでは受ける印象がかなり違う感じがします。家庭や学校、仕事、地域、国など、何かに所属する中でさまざまな役割を与えられて、「個」というもの、「個性」や「個人」という感覚、それぞれ異なる唯一無二でオリジナルな自己というものがぼやけがちな世の中で、あえて「個人たち」という意味のindividualsを使うことで、読んだ人に「個」というものを意識させる効果があるような気もします。
 それから、「医師」「上司」「CEO」「首相」というと、たいていの場合は男性を思い浮かべることが多いと思います。女性がこうした職業や役職に就くと「女医」「女性CEO」などと特別扱いされることが多いほど、まだまだ男性優位な社会なので仕方がないことだとは思います。そんな中で、あえて上司を女性、部下を男性、CEOや店長、社長などを女性という設定にするなど、世間一般では男性を思い浮かべることが多い役職や職業の人物を女性に、世間一般で女性を思い浮かべることが多いものを男性にという設定で会話文のパッセージを書くことが多い方もいて、男女平等の意識が高い方なんだろうなぁとうれしくなります。こうした方々を見習って、私も例文をつくるときはあえて世間で一般的な認識とは逆の設定でなるべく書くようにしたいなぁと思うようになりました。

【最近読んだ本から】
 最近読んでおもしろかった本を紹介します。
『平和ってなんだろう―「軍隊をすてた国」コスタリカから考える』(足立力也・著/岩波ジュニア新書・刊)
 最近訳させてもらった記事で、コスタリカで38歳の首相が誕生したというニュースを知りました。保守派が多いというコスタリカで、1回目の投票では宗教的観点から同性婚に反対を唱えた候補が1位だったということですが、決選投票では同性婚賛成を掲げた市民行動党のカルロス・アルバラドさんが当選したということでした。
 このニュースを見て、以前読んだ『平和ってなんだろう』に出てきた、選挙がお祭りのように大盛り上がりになっている様子を思い出しました。コスタリカではワールドカップ並みかそれ以上の盛り上がりになるそうで、演説会などには子どもも参加し、市民の間で政治の話も活発になるのだそう。日本だとだいたいは宣伝カーが候補者の名前を連呼するだけで、何を実現したい人なのかがよくわからず、盛り上がっている気配もなく…日本の選挙とは大違いで、驚いたのを覚えています。
 コスタリカみたいに日本も武力を放棄しろというような短絡的な本では決してなく、コスタリカがどのような経緯で、戦略として武力を持たないことを選んだのかということが読みやすく書かれていました。コスタリカの人々そのものに焦点が当てられていて、武力を持たないという選択をした市民がどういった人々なのかということを丁寧に見ている感じがしました。小学生の女の子が、「平和とは何か」という質問に「環境、人権、民主主義」と即答したというエピソードもとても印象的でした。今月読んだ中ではこれといってご紹介したい本がなかったので、だいぶ前に読んだ本からのご紹介となりました…。著者の足立力也さんによる寄稿文のリンクも載せておきます。
「集団的自衛権放棄」で逆に「国防力」を増したコスタリカの“逆転の発想”(ハーバービジネスオンライン 2015年07月14日)

【編集後記のような】
まかぬ種は生えぬといいますが、庭にすみれを発見しました。近所の歩道や神社に群生していて、うちにも咲いたらいいのになぁと思っていたら、2輪、うちの庭にも来てくれました。種が靴の裏についてきたのかもしれません。蒔いた覚えのないソラマメも花を咲かせています。乾燥させた豆を選別していた落ちたのが発芽したようです。庭の土はとてもかたいのですが、よくこんなところでと感心してしまいます。春はさまざまな花が次々に咲き出して外出が楽しみな季節。東京で暮らしていたころ、桜、ツツジ、あじさい、バラと、公園や緑地の花の移り変わりが楽しみだったのを思い出します。