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2018-05-14

つごもり月報 和暦弥生

今日で弥生も最終日。弥生は「草木がいよいよ勢いを増して生い茂る(いやおい)頃」という意味だそうですが、まさにその名の通り、草がぐんぐん伸びて、落葉樹の葉も大きく広がり、新梢も次々に伸びています。庭と田畑の手入れが慌ただしくなってきました。弥生のつごもり、今月のいろいろをお伝えします。(書きやすいのでなんとなくお題のようなものを設定しています。つごもり月報を始めた経緯については初回の記事をご覧ください→vol. 1

【Talk Over Some Tea】
遊びにきてくれたらお茶でも飲みながら話したいよもやま話といった感じのコーナーです。

 1月にスタートした草野マサムネさんのラジオ番組「ロック大陸漫遊記」を聞くようになったという話を1月にこのコーナーで書きましたが、また好きなラジオ番組が増えました。ピーター・バラカンさんの「ウィークエンド・サンシャイン」という番組です。
 友人の友人が営むカフェのSNSで、この番組を聴いていると「朝の仕込みがはかどる」と紹介されていて知りました。世界中のかっこいい音楽が紹介されていて、バラカンさんの解説も興味深く、音楽の世界が広がってきたように思います。
 土曜日の朝7時20分から9時までとちょっと朝早めの番組で、朝の早起きが少し楽しみになりました。うちはNHK FMの入りがあまりよくないのですが、インターネットでも聴けるので助かっています。

【手を動かす】
 今月はお財布を作りました。ペルーの先住民の人たちが作ってくれた鳥の刺繍の布財布を7年ほど使っていたのですが、小銭を入れるスペースの底に穴が空いて、コインがすり抜けていることがよくありました。いいお財布が見つかるまで…と思い、小銭入れのところに小さなポーチを入れて応急処置をしていましたが、コットンやリネンなど植物性の天然素材のお財布はなかなか見つからず、思い切って自分で作ることに。ミシンがないと無理かと思いきや、手縫いでも意外と簡単につくれました。素材はリネンです。外布には先代を引き継いで鳥の刺繍をちくちく。本を見ながら試行錯誤して作ってみたものの、ファスナーの付け方がイマイチよくわからず、ちょっと歪んでしまいました。自分で作ってみると、モノの価値の見え方が変わってくる感じがします。

【しごとのこと】
 ニュース記事の翻訳をさせてもらうようになって何年か経ちます。ここ数年で一番印象的だったニュースは北朝鮮と韓国の首脳会談の実現でした。
 昨年、朴槿恵前大統領が国政の私物化疑惑で大規模なデモが起こり(日本でも同じかそれ以上の権力私物化疑惑があるが…)、議会で罷免され、大統領選挙へという流れを訳しながら追っていたころ、北朝鮮の核実験のニュースも増えていて、すぐ地続きの国で核兵器を開発しているなら、韓国の人たちは強硬派を選ぶのではないだろうかという不安もよぎりました(日本の選挙では、海を隔ててさえ、北朝鮮が怖いからみたいなことで対立を煽る政党を選んだ人も多かったようなので…)。
 しかし、韓国の有権者は、対話による解決を訴える人権派弁護士の文在寅(ムン・ジェイン)さんを大統領を選んだというニュースを訳したときには、韓国の人たちは偉いとちょっと感激しました。武力に武力で対抗してきた結果、地球を破壊するのに十分な武力がすでに点在するこの世界で、対話と外交努力によって平和状態を構築して維持する以外に生存と繁栄の道はないと考える人が多かったのかもしれません。それから1年あまりで朝鮮半島の非核化に向けた話し合いが実現。アメリカと北朝鮮との首脳会談も予定されています。
 核兵器の廃絶や平和、そういった大きな問題は一見、日常生活とは関係のないような感じもしがちですが、全くそんなことはないということも、さまざまな世界のニュースを訳していく中で理解できるようになりました。最も身近なところで考えてみると、世界が平和になり、軍事費をたくさん使う必要がなくなれば、税金が教育や福祉にもっとまわせるようになり、また、支払う税金も減らせるという点でも、日常生活に直結しています。すぐには変わらないかもしれなくても、数十年、数百年後に結果が出るかもしれません。
 南北首脳会談について暗い未来予測もありますが、今の視点で見れば、平和に向けた大きな一歩であったことは確か。この一歩を着実な歩みにしていけるように、世界中の人々ができる範囲で効果的な行動を考える上で必要な情報がもっと充実してくれるといいのになぁと思います。未来のことを机の上で予想したところで、天気予報よりも当てにならないのでは…。未来を創るのは我々ひとりひとりなのだと思います。昨冬、本のコーナーでご紹介した『日本人のための平和論』をもう一度読んでみようと思いました。

【最近読んだ本から】
このひと月に読んだ本からおもしろかったものを紹介します。
『生きのびろ!―生きづらい世界を変える8人のやり方』(雨宮処凛・著/太田出版・刊)
 貧困をはじめとする多様な社会問題の解決に取り組まれている雨宮処凛さんが、生きづらいこの世界をユニークな方法で変化させている8人にインタビューをした本です。貧困に関する本は、直視するのが辛い現実が克明に描かれていることが多いような気がして、覚悟を決めないとなかなか読み始められず、大事なことだからと図書館で借りては来るものの、先延ばしにして期日が来て読めずに返すを繰り返していました…。
 でも、いざ開いてみると、飛行機でも何でも自作してしまう発明家、テントで生活するアーティスト、ハウスレスの人から生きのびる知恵を学んで発信している活動家、死にゆく命を平等に大切にするフリーランス僧侶などなど、「こんなオモロイ人がおったんか!」という感じで、先が気になってあっという間に読みました。自分なりのやり方で試行錯誤しながら、社会を良くしている姿にとても感銘を受けました。

【編集後記のような…】
 畑ではソラマメが採れはじめました。空を向いて伸びた豆の鞘が下を向いたころが収穫時と言われます。今年は雨が適度に降っているおかげか、実が大きくて、下を向きすぎてもげそうになっている鞘も。蚊もまだそんなにいないので、夏野菜の種まきに、ハーブの手入れに、庭や畑で過ごす時間が増える季節です。立夏を過ぎて、夏のような陽気の日も出てきましたが、まだ朝晩は寒かったり、雨で冷え込んだり、着るものがなかなか難しいですね。それでは、また来月。充実した和暦卯月をお過ごしください。