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2019-03-06

つごもり月報―和暦睦月(2019/02/05-03/06)ver. 2-vol. 6

今日は和暦睦月の晦日(つごもり)。明日から和暦如月です。庭でうぐいすの鳴き声も聞こえるようになりました。キジの声もケンケーンと聞こえてきます。それでは、和暦睦月のつごもり月報をお届けします。

ご関心のありそうなものだけ読んでもらうこともしやすいように、目次のようなものもつけています(テーマの変更の経緯はこちら(vol. 14)を、つごもり月報を始めた経緯については初回の記事(vol. 1)をご覧ください)。
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【1】These days ... ―最近のあれこれ:春のたねまき
【2】Words Pick Up―今月拾った英単語:gag
【3】News Pick Up―今月拾った英文記事
【4】Happy Things―お気に入りのモノ・コト紹介:及源鋳造のフライパン
【5】Books&Music:今月は本『あれから』
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【1】These days ...:春のたねまき
最近のあれこれを書いてみます。

二十四節気では今日から啓蟄。すごもりしていた虫たちが動き出すころとされています。我が家でも夜になると小さなヤモリが探検する姿を見かけるようになりました。今年は春が早い。種まきシーズン到来です。

例年だと、3月に種を蒔いても寒すぎて芽が出なかったり、成長がゆっくりすぎて草の管理が大変だったり、小さいままトウ立ちしてしまったりするので(*)、種まきは4月にしていましたが、今年はひと月ほど早く春の種まきを始めました。

足りない種があれば固定種の種を販売しているところから取り寄せようと思って、その1つの「たねの森」のカタログを見ていたら、こんな説明が書かれていました。

“昨春、種苗法が改正されました。それにより、自家採種が制限される品目が増えました。” 

自家採種の制限があるのは、現状では登録品種のみで、「たねの森」のカタログに載っている種は古くから栽培されてきたエアルーム(固定種・在来種)で登録品種ではないため、自由に自家採種して大丈夫とのこと。ですが、すぐに「だめ」とはならなくても、じわじわと自家採種を禁止にして、企業が種を独占支配できる体制をつくろうとしているのではないか、という懸念も多く見聞きしています。

我が家の畑や庭では、エアルームの大根や人参、ごぼう、パクチーが野生化して、勝手に花が咲いて種ができて芽が出て大きくなって、また種ができて芽が出て…を繰り返しています。だんだん強くなってきていて、草の中でも大きく育つようになりました。去年の12月には、笹だらけのヤブのなかに落ちた大根も見事に大きくなっていて、寒さ草が枯れた後、大きな大根の葉が姿を現して、「こんなところに!」ととても驚きました。

買ってきて蒔いたばかりの種ではこんなことが起こったことはありません。厳しい環境にもだんだん順応して進化していくようです。自家採種が制限されてしまうと、こういう環境に進化して身につけた適応能力も含め、種の多様性が損なわれてしまいます。自家採種をもっと自由にできるような社会になってほしいです。そして、公園や川原や空き地などが、野生化した野菜だらけになったらおもしろいし、万一災害があった時にも安心だと思います。

たねの森のカタログの後ろのほうには、エアルームの野菜を栽培している農園のリストが載っています。私がカタログを見始めたばかりのころに比べると、かなり増えてきていて、種をとりついで、無農薬・無化学肥料で栽培している農家さんがどんどん増えてきていることも知り、希望を感じました。我が家でもなるべく自家採種を忘れないようにやっていきたいと思いました。

*トウ立ち:花芽がついて伸びること。花芽がつくと可食部が固くなって食べにくくなる。アブラナ科(大根やカブ、小松菜など)の多くは、一定の大きさになってから寒さにあたり、その後、暖かさを感じると花芽をつけるため、寒いうちに種まきすると、小さいままトウ立ちしてしまうことがある。

【2】English Words Pick Up―今月拾った英単語:gag
今月取り上げるのは「gag」(複数形はgags)。「ギャグ、ジョーク(joke)」、「悪ふざけ、いたずら」という意味で使われる名詞で、「ギャグを言う」という意味の自動詞としても使われます。

カタカナ語をてっきり英語だと思いきや和製英語で英語では通じないという場合はよくあることで要注意なのですが(たとえば「ガソリンスタンド」など。英語ではgas station)、「ギャグ」がもともと英語だったとは思いもしませんでした。

オックスフォード英英辞典によると、19世紀ごろから劇場でのスラングとして使われるようになり、起源は不明とのことです。語源は異なりますが、「口封じ」「言論統制」といった意味もあります。

ギャグと言論統制が同じ単語になるというのは、なんだか考えさせられました。

【3】News Pick Up―今月拾った英文記事
リーディング素材として毎月1本、英文記事をご紹介しています。

今月はこちらの記事をご紹介します。
You Are Stealing Our Future: Greta Thunberg, 15, Condemns the World’s Inaction on Climate Change(Democracy Now 2018/12/13)[約619語]
スウェーデンのGreta Thunbergさん(当時15歳)が、ポーランドで昨年開かれた第24回気候変動に関する国際連合枠組条約(COP24)の締約国会議でスピーチし、その書き起こしを掲載している記事です。

ニュースを翻訳させてもらう仕事で、自国の政府に対して気候変動に対する取り組みの遅れを抗議するため、世界各地で10代の若者たちが学校を休んでいるというニュースを知りました。その火付け役となったのが、このスピーチのGretaさんとのこと。毎週金曜日に学校を休み、政府による不十分な気候変動への対応に抗議するため、スタンディングをしているそうです。すごい若者がいるものだと検索してみたところ、こちらのスピーチを発見しました。核心を突いた内容で、深く心を打たれました。

最近、標準的な大人よりも進歩した若い方を知る機会が増えてきました。希望を感じる反面、大人がもっとしっかりしないと、こんな立派な若い方々やその先の世代に、安心して豊かで幸せに暮らせる地球を残せないのではないかという危惧も感じます。Gretaさんのスピーチを読んで、自分に合ったやり方で、できることを地道にやっていきたいと改めて思いました。

動画はyoutubeでも見ることができます。
https://www.youtube.com/watch?v=VFkQSGyeCWg

【4】Happy Things―お気に入りのモノ・コト紹介
今月は、及源鋳造のフライパンをご紹介したいと思います。

及源(OIGEN)さんは岩手県の南部鉄器の老舗です。東京にいたときに、日本のよいものを集めて紹介しているエコトワザという国立市のお店で出会いました(現在は閉店しているようです)。及源さんのウェブサイトでは今は木の取っ手がついたタイプは販売していないようですが、私が購入したのは持ち手が木になっているもので、少し軽いです。おそらく、全部鉄のほうがリサイクルしやすいから木の持ち手のタイプは製造が終了になったのかも、と思います(あくまでも推測です)。

お店の方から、フッ素加工のフライパンのリスクを聞いて、家にあったフッ素加工のフライパンを使うのをすぐにやめました。海外では禁止もしくは規制されているところもあるのに日本はゆるゆるなので、海外で売ることができなくなったフッ素加工製品がどんどん日本に入ってきているという話も、ちょうど同じ頃、よく見聞きしていました。その後、いろいろな意見を聞きましたが、危険だという証明が不十分であっても、安全だという証明もされていないものであれば、絶対に使う必要があるものでもない限り、リスクを回避できるならできたほうがいいと思っています。

重いのが難点ではありますが、何を焼いてもおいしくできて、トーストもお好み焼きもパリッとカリッと焼けて最高です。野菜炒めはもちろん、野菜を厚切りにして塩を振り、じっくり弱火で焼いただけでも甘味と旨味が最高に引き出されて、味付けは他にいらないくらいおいしい!

鉄のフライパンはものすごく焦げ付いて使いにくいイメージがありましたが、思ったほどでもなく、多少こびりついても水につけておいてタワシでこすればするっと取れます。野菜炒めを続けていれば鉄にしっかり油がなじんでつるっと剥がれますが、お好み焼きやスコーン、ホットケーキなど粉物が続くと、鉄から油が吸い取られてしまうのか、ちょっとこびりつきやすくはなります。

使ったらなるべくすぐに洗って火にかけて水気を飛ばす(塩分や水気はサビのもとになる)、すぐに洗えないときは水につけておく(長時間はつけない)、洗うときは洗剤は使わず(油分が抜けてこびりつきやすくなる)にたわしでゴシゴシ洗う、ときどき油を塗る、など、適切に手入れをすれば使いやすいフライパンに育っていきます。

それまで使っていたフッ素加工のフライパンは、2~3年すると表面が剥げてきて、中のアルミが見えてきたり、こびりすきやすくなったり、しょっちゅう買い替えなければならず、破砕ごみ行き(=埋立地へ)でした。剥げた物質は少しずつ食べ物と一緒に食べてしまっていたのだと思いますが、鉄のフライパンなら少しずつ食べてしまっても鉄分補給になります。買い替えのたびに埋め立てゴミを増やすことになっていましたが、鉄のフライパンなら簡単な手入れで一生使えます。

鉄のフライパンにも、錆止め剤が塗られていてこれを焼き切る処理をしてから使うタイプのものが多いということを、最近になって知りました。鉄は何もしなければ、空気中の水分や塩分と反応して赤さびがついてしまうからです。及源鋳造では、鉄瓶の錆止め処理法をフライパンや鍋にも応用して、ニスなどの錆止め剤を塗らずに、鉄を1時間ほど焼いて酸化皮膜をつくっています(「台所道具を一生ものにする手入れ術」[日野明子・著]参照)。蜜蝋とエゴマ油など、自然由来の天然ワックスを使って錆止めをしている作り手さんもいます。製造工程での環境負荷も配慮して購入したい場合は、錆止めの方法もチェックしてみるとよいかと思います。

【5】Books&Music:今月は本『あれから』(短歌・俵万智/絵・山中桃子/刊・今人舎)

おすすめの本とおすすめの音楽を隔月でご紹介しています。今月は本のご紹介です。

今月ご紹介するのは歌人の俵万智さんの短歌集『あれから』です。よく見ると「俵万智3・11短歌集」と添えられていて、『あれから』というのは「2011年3月11日から」ということだとわかりました。

この本では、東日本大震災から1年の間に綴られた短歌をまとめています。あの日の様子、あのあとの社会の感覚が鮮明に蘇り、子どものことを想う親の気持ちがまっすぐに響いてきます。子どものために、少しでも不安を少なくしたい、とのシンプルな気持ちから、当時暮らしていた仙台から南の島へ移住されたそうです。移住してがらりと変わった暮らしのなかで、日々の一瞬一瞬に集中して朗らかに生きていくお子さんの様子も歌われていて、子どものたくましさはすごいなあ、と見習いたい気持ちになりました。

あれから8年が過ぎようとしています。今でも不安や悲しみ、苦しみを抱えて暮らしている方々がいらっしゃることにせめて思いをめぐらせたいと思います。原発事故も終わっていません。風化させ、なかったことにしてしまいたい、という風潮が強いですが、目をそらすことなく、震災と原発事故が突きつけた社会の問題を解決するために、できることを探り続けていきたいです。

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朝晩は真冬の寒さですが、昼間はすっかり春の陽気です。うぐいすの声で目覚め、もずの多種多様な鳴き声に「これももずだったのか」と驚き、ひばりのさえずりに浮足立ち、外で過ごす時間が増えてきました。ふきのとうにつくし、梅にさくら、楽しみなことが目白押しな春。みなさまもお元気で満喫してください。それでは◎